子供の“得意”感情がある中での指導する上で考えたこと
入会半年 小学2年生の白帯男の子が合氣道で「得技選手権」に出場⁉
合気道技「胸突き小手返し」を披露することになったという話がありました。
「合気道は自分の得意技だ」と思ってくれるほど楽しんでくれている証拠でもありますし前向きに取り組んでいる証拠でもあります。指導者として、その姿勢を嬉しく思います。
しかし...複雑な感情になります。
「彼の得意な気持ちを尊重するべきか、細かい指導をするべきか――」
このような場面では、子どもの前向きな姿勢を崩さないようにしながらも、技の本質を伝えなければならないという指導者としての葛藤があります。また、彼が道場の代表として技を披露する以上、合氣道の魅力や姿勢を正しく伝える責任も感じます。
彼が前向きに「得意だ」と感じる背景には何があるのか、そして指導者としてどのように成長を促すべきかを考える機会となりました。
この経験から、子どもが「得意」と感じる背景や、そこから学べること、そして親子で合気道を学ぶ意義について考察していきたいと思います。
子どもの「得意」とは何か?
そもそも、子どもの「得意」は必ずしも技術の完成度だけに限りません。以下の要素が大きく影響します。
1達成感と自己肯定感
彼にとって「胸突き小手返し」は難しい技です。しかし、その技を「かっこいい、お気に入り」と感じていることが、「合氣道が得意だ」という達成感を生み、選手権への立候補に繋がったのでしょう。
道場で学んだ技を学校の場で発表しようとする彼の姿勢には、合氣道を通じた成長が確かにあります。
合氣道は形の美しさだけがすべてではありません。
・ 姿勢を整えること
・自身の体裁きにより相手の姿勢を崩すこと
・緩急を作り、自他ともに見て取れる、そして実際に掛かる技の流れを作ること
これらは合気道の技に「中身」を与える要素です。他にもたくさんあると思います。彼が学校で技を発表することは素晴らしいことですが、それを機に「技とは何か」「姿勢とは何か」を伝える良い機会だと感じました。技の形を超えて、その「中身」に向き合うことで、また、自身だと完璧だと思っていたものを他者から注意、指導されることを通して、合気道を通じた心の成長もあると思います。
2親との共同作業
彼はお母さんと共に「親子合気道」として稽古をしています。親と一緒に取り組むことで得られる安心感が、彼に「得意」と感じさせる自信を与えたのかもしれません。親と共に学ぶことで、合気道は単なる習い事ではなく、「特別な時間」になっているのでしょう。 同じ道場の門下生としての同じ視線の関係です
親子合気道の魅力:
• 共に学ぶ時間が絆を深める
• 親が手本を見せることで、子どもは自然と姿勢や礼儀を学ぶ
• お互いに成長を感じられる
合氣道は「相手と調和する武道」です。親子で取り組むことで、「支え合うこと」「相手を尊重すること」を自然と学ぶ機会にもなります。
技の形を超えて「中身」に向き合う
彼が学校で技を発表することは素晴らしいことですが、それを機に「技とは何か」「姿勢とは何か」を改めて伝える良い機会だと感じました。
技の形を真似るだけではなく、その中身に向き合うことが大切です。
合氣道を通じて学ぶことは、技術だけではありません。自身では完璧だと思っていたものを他者から指導されることを通して、「謙虚さ」「努力する姿勢」「心の成長」も育まれるのです。
指導者として伝えたいこと
私は彼に「姿勢が大切だよ」「合氣道を代表するつもりでやろうね」と伝えました。一見すると、前向きな気持ちに水を差すようにも感じられるかもしれません。しかし、
「本当の得意」は、自信とともに裏打ちされた努力から生まれるものです。
技の完成度は未熟でも、本気で取り組む姿勢を身につけることが、子どもの成長に繋がります。繰り返し努力し、技を磨くことで得られる「本当の自信」を、合氣道を通じて学んでほしいと願っています。
親子で合氣道を始める意義
親子で合氣道を学ぶことは、単なる習い事を超えた「特別な時間」を生み出します。
親と一緒だからこそ得られる安心感
礼儀や姿勢を自然と学ぶ環境
支え合い、共に成長する喜び
子どもが「得意」と感じる瞬間には、技術だけではない心の成長があります。その成長を支える親子の時間は、きっと人生の大切な宝物になるでしょう。
合氣道は、技と心を育てる――そんな武道です。