(一社)楽心館 氣と丹田の合気道会

Our Story

身の程で楽しむ

楽心館 会員

手合わせをすると、エネルギーの強弱がよく分かる。
強い人には闘争心を、弱い人には何となく優しい気分を感じる。

今よりもう少し若かった頃、頑張ることが良いことと信じ、未経験の分野の仕事と格闘し連日終電車で帰るような生活を送っていた。気が付かないうちに、精神的・肉体的ストレスが体を傷つけていたのか、ダウンしてしまった。病院のベッドでの暮らしが続く。治療以外には何をすることも無く、一畳ほどのスペースから降りることもままならず、頭を無にし、ただひたすら時の過ぎるのを待ちわびる。

時おりカーテン越し、廊下越しに悲しみの気配が伝わってくる。残していく幼子を思ってすすり泣く母親、見るたびに顔色が悪くなりあきらめの視線を廊下に送る患者、夜中のあわただしい足音と親族を呼び入れる声、来客と元気に肩書きで呼び合っていたがそのうち痛みで夜も眠れず声を出す気力もうせた社長、これは試練だといいつつ薬の副作用に耐えられなった空手7段の先生、もう薬が効かなくなってしまったと寂しく笑う人。慣れかあきらめか、これも運命、成るようにしかならないと開き直る。

40度の熱が3週間続く。熱がでるのは若い証拠だと、火の玉ボーイのあだ名をもらう。解熱剤が使えるのは一日3回まで。37度位に熱が下がるも3時間位しか持たない。つかの間の至福の時間、天国も斯くやと思われる。

始めての一時外出、青葉が目にしみる。真っ直ぐ歩くのが以外と難しいことに気が付く。どうも後に倒れそうになる。退院できたら運動をしようと心に決めた。

病気で失うものは多く、得ることは何もない。大事に思うことの順番が少し変わる。物事にとらわれるのがわずらわしい、大勢に影響はないと良く言えばおおらか、悪く言えばルーズになる。楽しいことだけをしようという気になる。

おもしろそうなので合気道を始めた。小さい子供、小学生、中学生、高校生、青年、壮年、人生の先輩、すべての世代と手合わせができる。手合わせをすると、エネルギーの強弱がよく分かる。強い人には闘争心を、弱い人には何となく優しい気分を感じる。昔の村の共同作業の雰囲気か。なかなか貴重な体験をさせてもらえる。

技は難しい。手を持たれただけで緊張してしまう。技を掛けようとすればするほど上手く行かない。持たれた事にとらわれず、正しい姿勢で無駄なくゆったりと体を動かせればと思う。凄いパワーを持った人もいる。憧憬と恐れを持って手合わせをする。壊されないよう注意しつつ、どうしたら制することができるかと四苦八苦する。時に少しは技が分かったつもりになるが、上級者には通じず落ち込む。

合気道、柔術、棒術、剣術、打拳、様々な技が経験できる。経験の機会を与えられるということは、とても重要なことだ。先日も諸流派の演武会を見る機会を与えられた。学生の若く軽やかな合気道の演武。粘りつくような柔術の演武。空気を切り裂く居合の音。サイを使った空手の直線的動き。無駄が無く、伸びやかに, スピーディに、かつピタリと形のきまる棒術。子供の時に柔道を習ったことがあるという外国の見学者が感激していた。演武会後の懇親会も盛り上がった。合気揚げや極め技をかけ合ってコミュニケーションをとるというのも面白い風景だ。

色々な体験をして、その中から得意なものを見つければと思う。先の演武者のレベルに達することができるかどうかは分からない。練習後の体と心の開放感が心地よい。先は長い。身の程にあった楽しみ方で行こう。

楽心の仲間に感謝。